食品・飲料容器として果たしてきた役割を探る
飲料缶の普及 手軽な飲みやすさを提供
1954年 日本初の缶ジュース発売 —紫外線を遮断しビタミンCを保護

写真4/明治天然オレンジジュース
写真提供:明治製菓(株)
日本で缶飲料が初めて製造販売されたのは1954(昭和29)年、明治製菓(株)が缶入りオレンジジュース(写真4)を東京地区で発売したことに始まる。オレンジジュースは第二次世界大戦後、アメリカからびん入り商品がもたらされ、全国に広がっていた。そのため容器はびん入りが常識となっていた。明治製菓(株)でも1952(昭和27)年にびん入りオレンジジュースを発売したばかりであったが、その直後なぜ缶入り商品を開発したのだろうか。
「びんはオレンジジュースに含まれるビタミンC が、熱や紫外線で壊れてしまい、短期間で色や味が変質してしまう欠点がありました。一方、缶は紫外線を遮断できるため、色や味、ビタミンC などの栄養分が保護される利点があります。当社は1936(昭和11)年からみかんの缶詰を発売しており、そういったノウハウが活かされた商品開発であったと思います」(明治製菓(株)広報室)。
明治製菓(株)は1957(昭和32)年、缶入りオレンジジュースの全国発売を皮切りに、各種缶ジュースを次々に発売。他の清涼飲料メーカーも相次いで缶ジュースを商品化した。缶ジュースは栄養分を損なうことなく内容物の長期保存を可能にする機能性とともに、どこでも手軽に飲める利便性が受け入れられ普及していった。
1958年 日本初の缶ビール発売 —内面塗装で金属臭を克服

写真5/アサヒゴールド(缶ビール)
写真提供:アサヒビール(株)
日本で缶ビールが初めて製造販売されたのは1958(昭和33)年、朝日麦酒(株)(現アサヒビール(株))が発売したことに始まる(写真5)。缶ビール開発の歴史は、1935(昭和10)年にアメリカで缶ビールが発売されたことがきっかけで、1936(昭和11)年に大日本麦酒(株) (現アサヒビール(株))が製缶メーカーと共同研究したことにさかのぼる。しかし日本では日中戦争の際、清酒を缶に入れて戦地に送ったところ、金属臭が強く缶詰は無理だとするのが定説となってしまい、研究開発は途絶えた。
それが第二次世界大戦後、アメリカ兵が持ち込んだ缶ビールがきっかけとなり、1957(昭和32)年に製缶メーカーと共同研究開発を再開し、缶の内面の金属露出をカバーする内面塗装の開発などの実用化に向けた動きが加速した。この年、大阪大学発酵工学教室がビール缶の官能検査を実施した結果、国産缶ビール(試作品)、びんビール、アメリカ製の缶ビールとの間に容器による味の差異はないことが判明した。朝日麦酒(株)でも詳細検査を行い、金属臭を含めた品質を確認。こうして日本初の缶ビールが開発された。アサヒビール(株)では、日本初の缶ビール誕生の意義を社史の中で次のように記している。
「びんビールを飲むにはグラスがつきもので、どうしても屋内中心ということになる。しかし缶ビールは軽く、割れることがない。コップ兼用になり、どこへでも移動可能だ。また、自分なりのペースで手軽に飲める。缶ビールの登場は、ビールの飲み方、機会が無限に広がることを教えてくれた。それは、新しいビールの世界の扉をひらくこととなったのである」 日本初の缶ビールは、当時の消費者のニーズにマッチし、大きな飛躍を遂げることができた。
1969年 世界初の缶コーヒー発売 —特殊コーティングで風味を保つ

写真6/UCC缶コーヒーミルク入り
写真提供:UCC上島珈琲(株)
どこでも手軽に飲める、缶飲料の申し子と言えるのが缶コーヒーだ。缶コーヒーの歴史は、UCC上島珈琲(株)が1969(昭和44)年に世界で初めて製造販売した日本発のオリジナル商品から始まる(写真6)。
缶コーヒーの開発は、創業者の上島忠雄氏がある日、駅のホームでびん入りのコーヒー牛乳を飲み残したまま列車に乗り、「もったいないことをした」「缶入りコーヒーにしたら、いつでも、どこでも飲めるはず」という思いを抱いたことがきっかけとなった。
缶コーヒー開発は、殺菌処理することで風味が変わってしまうという技術的課題があった。缶コーヒーは乳製品であるため、清涼飲料のような低温殺菌ではなく、高温・高圧殺菌しなければならず、どうしても加熱臭が生じコーヒーの味を損なった。また従来の缶では、缶の鉄イオンがコーヒー成分の一つであるタンニンと結合して化学反応を起こし、コーヒーを真っ黒にしてしまった。
上島氏は「このブラックコーヒーは飲めんぞ!」と言って技術陣を笑わせつつ檄を飛ばしたという。味覚はミルク・砂糖とコーヒーの比率など、いろいろ調整することで解決できたが、缶との化学反応が商品化への最大の難関となった。UCC上島珈琲(株)は製缶メーカーの協力を得て研究開発を続け、缶の内面塗料の改良や特殊コーティングを施すことで化学反応を防ぐことに成功した。
世界初の缶コーヒーは1970(昭和45)年、大阪万博で脚光を浴び需要を伸ばした。これは3月に開幕した万博会場で缶コーヒーを飲んだ人たちの返り注文が、夏場になって殺到したことが大きな原動力となった。
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