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産業・民生・運輸一体で取り組むCO2削減

産業界では京都議定書に基づき「地球温暖化」のためのCO2排出削減を推進し、着実に成果をあげている。しかし一般的に、最終製品のもととなる素材メーカーなどの取り組みや成果はあまり知られていないのが現状だ。今回は、鉄鋼業における取り組みを紹介すると同時に、スチール缶が飲まれた後に分別排出・収集されることで、どれだけのCO2削減をもたらすのかを検証する。

 

増加の一途をたどる温室効果ガス

2005年2月に発効された京都議定書により、日本は2008年から2012年までに、温室効果ガスの6%削減を義務づけられた。CO2をはじめとする温室効果ガスは、1990年から2002年の13年間でおよそ7.6%増加しており、目標達成のためには、この5年間で約14%の削減を余儀なくされている。
日本の部門別CO2排出量 エネルギー消費分野は、「産業」、「民生」、「運輸」の3つに大別できる(グラフ1)。1990年から2000年のエネルギー消費量およびCO2排出量の推移を見てみると、この10年間で、産業分野では数値が横ばいなものの、民生分野では29%、運輸部門では19%も増加している。京都議定書の目標を達成するには、民生・運輸分野の数値を削減することが最も大きな課題といえる。

 

CO2削減に向けた民生・運輸分野の取り組み

運輸分野におけるCO2排出の大半を自動車が占めている。2003年10月より、東京、神奈川、千葉、埼玉の1都3県で実施されている「ディーゼル車排出ガス規制」は、基準値に満たないディーゼル車を排除することにより、排気ガスに含まれる人体に有害な窒素酸化物や粒子状物質などを抑制する効果があるが、これは温室効果ガスの削減にも大きく影響する。また、自動車のアイドリングも大きな問題だ。1時間のアイドリングで、約1~1.5リットルの燃料を消費し、その間に約500g~1kgのCO2が排出される。不要なアイドリングを防止するため、全国の路線バス会社では、信号待ちなどの停車時に自動的にエンジンが停止する「アイドリングストップ車」を本格的に導入した。

(社)全国通運連盟およびJR日本貨物鉄道(株)によると、貨物の中・長距離輸送をトラックから鉄道へ切り替える「モーダルシフト」を推奨している企業が増えているという。よりクリーンな輸送機関への転換は環境負荷軽減ばかりでなく、道路の渋滞の緩和やコスト削減にもつながり、国も2010年までに500km以上の中・長距離輸送における鉄道の分担率を50%以上に引き上げる目標を掲げている。

一方、民生分野でのCO2排出策としては太陽光エネルギーの利用が有望だ。その埋蔵量は無限といわれ、この先50~60年の間で枯渇する可能性のある石油や天然ガスを代替する最も身近なエネルギーとして注目を浴びている。近年、太陽光熱をその目的用途に応じ、給湯・暖房・冷房などの機能に変換する技術が発達してきた。また、補助熱源や蓄熱槽の併設により、夜間や冷間時でもエネルギーの供給が可能となり、その利便性は高まりつつある。かつては病院、レストラン、スイミングプールなどの業務用施設の間で普及が進んでいたソーラーシステムも、現在では一般家庭でも設置されるケースが増えてきた。

 

CO2削減に向けての鉄鋼業の取り組み

鉄鋼業は自主行動計画を策定し、地球温暖化対策に取り組んでいる。鉄鋼業の地球温暖化対策は、主に次の5つの対策から構成されている。

(1)鉄鋼生産工程における省エネルギーへの取り組み
(2)廃プラスチックなどの有効活用
(3)製品・副産物による社会での省エネルギー貢献
(4)国際技術協力による省エネルギー貢献
(5)未利用エネルギーの近隣地域での活用
鉄鋼業はこれまで、高張力鋼・電磁鋼板などの高機能化製品を通じた省エネルギーと、工程連続化・工程省略、生産設備の高効率化更新など鉄鋼プロセスの省エネルギーで地球温暖化対策を進めている。さらに廃プラスチック、廃タイヤなど廃棄物資源リサイクル、副生ガスの再利用、排熱回収などによる省エネルギーなどにも取り組んで、CO2削減を果たしつつある。

こうした施策により鉄鋼業におけるエネルギー起源CO2排出量は、基準年の1990年度を100%(1億9,483万t)とすると、2004年度は94.9%(1憶8,480万t)と5.1%の削減を果たしている。さらに2010年度には、1990年度比で10%の削減(粗鋼生産1億tを前提)とともに、追加的取り組みによる1.5%減も数値目標としている。

 

スチール缶リサイクルがもたらすCO2削減効果

スチール缶のリサイクル率は、2005年に88.7%を達成した。これは他国と比較しても極めて高い数値だ。リサイクル率の向上は、鉄鋼製品の原燃料である鉄鉱石や石炭などの資源の節約だけではなく、CO2削減にも大きく寄与している。

2004年のデータによる試算では、2004年に回収・再資源化された使用済みスチール缶は約80万tで、仮にこの80万tを原材料から製造すると、鉄鉱石130万t、石炭41万tを節約できたことになる。スチール缶はスクラップを使用して製造することにより、鉄鉱石から製造するときに比べ、エネルギー消費量が75%、CO2の発生量も82%軽減される。このエネルギー節減量は、名古屋市にほぼ匹敵する約90万世帯分の年間電力使用量とほぼ同等で、CO2の排出削減効果は、北九州市の一般家庭約43万世帯の年間CO2排出量を削減する効果がある(1世帯あたり2.05t-CO2を前提)。

環境省がLCA(ライフサイクルアセスメント)(※)という手法を導入して、2002~2004年度にかけて行った、各飲料容器における環境負荷の実態および課題の把握と、リユース・リサイクルによる環境負荷低減効果の推計でも、スチール缶リサイクル率の向上によるエネルギー消費量とCO2排出量の削減が証明されており、廃棄物の排出量も85%以上軽減された。

スチール缶が高いリサイクル率を誇る要因として、「受け皿」の多さがあげられる。製鉄工場(電炉・高炉・鋳物工場)は全国に74工場あり、ほぼ全ての工場でスチール缶がリサイクルされている(図1)。さらに効率よくリサイクルするために、地域ごとに最寄の工場で再生製品を製造するシステムが確立されており、スクラップの回収および各工場へ運搬するときに発生する温室効果ガスの削減にもつながっている。

京都議定書で定められた数値をクリアするために、まさに「産業」、「民生」、「運輸」三位一体の取り組みが不可欠だ。私たち一人ひとりの温暖化に対する自覚と危機意識を向上させて、生活のあらゆる側面からさらなるCO2排出削減に尽力していくこと。それが未来の子どもたちのために、住みよい地球を残すことにつながっていく。

 

※注:LCA(ライフサイクルアセスメント)…ある製品につき、資源の採取から製造、使用、破棄、輸送などすべての段階を通して、投入資源あるいは排出環境負荷による地球や生態系への環境影響を定量的、客観的に評価する方法